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作成:2019-05-30 15:11   最終:2019-05-30 15:11

小説を宣伝するためのサイトを作る その1

著:柳井政和(小説 / Twitter


 ――小説を書いたら、より多くの人に読んでもらいたい。

 それは、小説を書く人間の多くが望むことだろう。

 私は2016年に『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』で文藝春秋から小説家としてデビューした。第23回松本清張賞の最終候補作を改題したものだ。この本を切っ掛けに、私は商業小説の世界に飛び込んだ。そして、紙の出版社が抱える問題に直面することになった。

裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬
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 本は世に多く出ている。特別なベストセラー作でない限り、ほとんどの本は積極的に売られることはない。とりあえず出しておき、運よくヒットした本や作家に広告費を投入する。出版社のビジネスモデルはそうしたものだ。それは原始的な農業に似ている。

 出版社は多くの種をまき、その中から育ったものだけを刈り取る商売をしている。しかし種である作家は、誰もが茎を伸ばし、葉を広げ、花を咲かせたいと願っている。

 私は最初の本が出る時に驚いた。「作家の方は、どーんと構えていて下さい」その言葉とは裏腹に、広報は基本的に献本を送るだけということだった。よい本は、いずれ発見されて売れる。しかし、新人作家の本は1ヶ月もすれば書店から消える。「いずれ」はないのだ。

 そこで私は手弁当で広報活動をおこなった。私は過去に技術書を出したり、技術系記事の連載を行ったりしていた。その伝手を使い、露出の機会を作ってもらった。そうしなければ、誰にも知られることなく本が消えていくことが明らかだったからだ。

 そうした紙の出版社の問題は、デビューから2年後に『#電書ハック』という電子書籍編集部を舞台にした小説で大いに書いた。

#電書ハック
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 この本には「出版社は、読者と作家、読者と作品を繋ぐ存在だ」というメッセージを込めた。それができない出版社に存在意義はない。そして時代に合わせて変わっていけない出版社は、いずれ消えていく。

 時代は大きく変わった。「本が売れない」という声が聞こえる。しかし私が体験した範囲では「本を売っていない」という方が正しい。他の業界から来た人間として、そう強く感じる。

 時代についていけていない。過去のやり方が現代のマーケットに合っていない。出版社は、当然そうした状況に問題意識を持っている。

 去年私は、新潮社から『レトロゲームファクトリー』という本を出した。

レトロゲームファクトリー
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 雑誌の『yomyom』で連載して、新潮文庫nexから発売という流れになった。その時期、『yomyom』は紙の本が終わり、電子のみになった。おそらく、外から想像する何十倍ものプレッシャーがあり、苦しみがあっただろう。そうした状況の中で、『yomyom』の連載だけでなく、同誌でのゲーム特集、対談の掲載、その掲載部分を無料電子書籍として頒布、『cakes』での連載と、売れる手を多く打ってもらった。

 小説を売るというのは、一人ではなかなか難しい。出版社という梃子は大きい。しかし、大きいということはデメリットもある。意思決定や仕事の初動が遅いのだ。これはどうしようもない。たった一人で仕事をして自分の本だけを売りたい作家と、同じ速度で物事が回るはずがない。

 より素早く、より多くの広報をしたい。

 しかし出版社任せでは牛の歩みとなってしまう。多くの作家は、ネットで自著を宣伝している。私もTwitterで毎日のように宣伝している。また、『技術書典』『文学フリマ』に参加して、商業出版された本を手売りしている。出版社とレトロゲームショップの間に入り、本を卸してもらったこともある。

 しかし「読者と作家、読者と作品を結びつける仕事」が満足におこなわれているとは言いがたい。速度も頻度も足りていない。この問題を解決するには、出版社が担っていた仕事を、作家側に持ってこなければならない。


 私は作家デビューをして、他の作家の方と知り合う機会を得た。

 私のデビュー作が「サイバーミステリ」と呼ばれるジャンルの小説であったことから、先達である一田和樹さんがレビューを書いて下さった。その後、交流が始まり、一田さんのオフ会に参加したり、出版社への営業に同行させてもらったりとお世話になった。

「裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬」柳井 政和(ブックレビュー)
https://scan.netsecurity.ne.jp/article/2016/08/29/38883.html

 私は一田さんと「どう本を読者に届けるか」という話をした。コンテストを開くのがよいのか、アンソロジーを企画するのがよいのか。様々なアイデアを語り合った。

 そうした中で、私は出版社を巻き込んで何かをすることの難しさを感じた。作家が考える仕事の速度が日単位なら、出版社が考える仕事の速度は、週から月単位なのだ。物事の進行が遅すぎるのだ。

 今月、文学フリマに初めて参加して、その時の体験を記事に書いた。その時に、文学フリマが始まった経緯を知った。

GW最終日に、文学フリマで本を売ってみた
https://hbol.jp/191906

「文学フリマ」は既成の文壇や文芸誌の枠にとらわれず〈文学〉を発表できる「場」を提供すること、作り手や読者が直接コミュニケートできる「場」をつくることを目的としたイベントです。

 必要なのは、作家側が自由に活動できる「場」だろう。「場」としての出版社の役割は大きく後退している。その代わりになる「場」を作家主導で用意するべきだ。それも、商業小説、同人小説、Web小説などの垣根を取り払ったものを。そうした「場」を用意したい。そう強く考えるようになった。

 これから先、作家が持つべきものは2つある。1つは「新しい出版と流通」、もう1つは「メディア」である。まずは後者から始めようと思い、活動を開始した。


 「文学フリマ」の数日後、一田和樹さんのオフ会が、池袋のマダムシルクという店であった。そこには、何人もの小説家の方々が参加していた。そこで私は時間をいただいてプレゼンをした。出版社の抱える問題、作家に必要なもの、そうしたことを語ったあと、新しいサイトを開発しているという話をした。

 小説を宣伝するためのサイト。そのサイトは、商業小説、同人小説、Web小説問わずに、小説の宣伝を投稿できる。また、小説に関係する情報発信ができる。

 こうした活動に賛同する方は、声を掛けてもらえるとありがたい。また、自分の小説を多くの人に読んでもらいたい人は、活動に賛同を表明してくれると嬉しい。賛同者の投稿を行えるページも用意した。

小説を宣伝するサイト 賛同者登録
https://docs.google.com/forms/d/1xFVTOQH5bW8LDdYOus2HpQXMc8tOa4hWZFb7pNo8CUQ/edit

 賛同者として名を連ねたい方は、是非情報を提供して欲しい。賛同者の情報は、積極的に発信していきたい。

 記事の寄稿も受け付ける予定だ。私が全て手弁当で行っているので、原稿料は出ないが、自由に宣伝に使って欲しい。自著のアフィリエイトのリンクなど、制限は最小限にする予定だ。自サイトからの転載記事でも構わない。有用なものは掲載していきたいと考えている。

 また、新しい本を作る切っ掛けにも繋げられればと考えている。私と一緒に本を作り、売っていきたいという出版社の方がいれば、声を掛けて欲しい。一緒に組んで、情報発信しながら小説を作り、売っていきたい。

 私の得意分野はエンタメ小説だ。IT業界を舞台にした小説、ゲームなどのサブカルチャーを題材にした小説に強い。過去には、KADOKAWAの日本ホラー小説大賞の最終候補に2回入っており、ホラー、サスペンス分野も好む。Web小説では、ラブコメのラノベも書いており、そちらの仕事でもよい。

 少し話が逸れたので戻したい。

 小説の宣伝をする「場」を、作家主導で作りたい。それも、商業、同人、Webの垣根を取り払って。

 成功するかどうかは分からない。しかし、何もせずに不満だけを言うのは性に合わない。大きく転び、泥だらけ、血まみれになるかもしれない。それでも、前に進んでいきたい。

 というわけで、少しずつだが踏み出していこうと思う。

(続く……。)

小説を宣伝するためのサイトを作る その2

(この文章は、noteに投稿した文章を修正して再投稿したものです)


柳井政和の商業小説

『レトロゲームファクトリー』

 レトロゲームの移植を専門におこなう会社「レトロゲームファクトリー」。その社長「灰江田直樹」と、プログラマー「白野高義」の元に、大口の依頼が舞い込んだ。伝説的ファミコンゲーム「UGOコレクション」10本の復活プロジェクト。だが開発者は最後の作品の権利を買い取り、失踪していた。一体何故か。開発者はどこか。横取りを狙う大手企業を抑え、封印ゲームを復活させよ!

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『ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』シリーズ

 プログラマー転職支援会社の社長、安藤裕美(あんどうひろみ)と、何でも屋のプログラマー鹿敷堂桂馬(かしきどうけいま)。熱血とクール、好対照の2人が、IT業界で起きた犯罪に挑むシリーズ。プログラマーの著者による、リアリズムで迫るIT系社会派ミステリ小説。

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『#電書ハック』

 紙の本好きの文学少女が、電子書籍編集部に配属になった! 新入社員「春日枝折」は電子書籍の仕事を始める。そして、激動の電子書籍業界を体験し、そこで蠢く作家のテロに直面する。文学少女が編集者として一人立ちしていく姿を追いながら、変貌する出版界の明日を占うお仕事小説。

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