私は2016年に『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』で、文藝春秋から小説家としてデビューしました
松本清張賞の最終候補作の書籍化です。念願の商業作家デビューです。
しかし出版社というものは、ベストセラーならともかく、1冊1冊の本を売るために大きな労力は掛けてくれません。新人作家というものは、特別な才能を持っているか、タイミングに恵まれなければ、人目にとまることなく埋もれていきます。
そうした出版社が抱える様々な問題は、デビューから2年後に『#電書ハック』という電子書籍編集部を舞台にした小説でも触れました。この本には「出版社は、本と読者、作者と読者を繋ぐ存在だ」というメッセージを込めています。
――「本と読者」「作者と読者」をマッチングするには、どうすればよいか?
そのことをデビュー以来考えています。
デビュー当時に、少し時間を戻しましょう。私のデビュー作は「サイバーミステリ」と呼ばれるジャンルの小説でした。そのことから、このジャンルの先達である一田和樹さんがレビューを書いてくれました。その後、交流が始まり、「本と人のマッチング」について色々と話し合いました。
私自身の経験、先達からの話、そうした知識が徐々に増えていくうちに、私は、出版社に頼らない「本を売ったり告知したりする仕組み」が必要だと考えるようになりました。
デビューから数年経ち、2019年の5月に、私は「文学フリマ」に初めて出店しました。同人誌、商業誌を問わず、自著を直接売る「本の即売会」です。そして「文学フリマ」の目的を知りました。
「文学フリマ」は既成の文壇や文芸誌の枠にとらわれず〈文学〉を発表できる「場」を提供すること、作り手や読者が直接コミュニケートできる「場」をつくることを目的としたイベントです。
文学に必要なのは「場」である。
作家主導で情報を届ける「本と読者の距離を近付ける場」を作るべきだ。
そうした「メディア」が必要だと考えるようになりました。
「文学フリマ」の数日後、一田和樹さんのオフ会が、池袋のマダムシルクという店でありました。そこには、何人もの小説家の方々が参加していました。そこで私は時間をいただいてプレゼンをしました。出版社の抱える問題、作家に必要なもの、そうしたことを語ったあと、「新しいサイト」を開発しているという話をしました。それがこのサイトです。
「本と読者」「作者と読者」を結びつけるための実験的なサイトです。商業小説、同人小説、Web小説問わずに、小説の宣伝を投稿できる「場」です。また、小説に関係する情報発信もできるようにしました。何が正解か分からない中での、手探りの「場」です。
――小説を書いたら、より多くの人に読んでもらいたい。
それは、小説を書く人間の多くが望むことです。
活動に賛同を表明してくれる人は、賛同者の投稿をおこない、ご連絡をいただければと思います。
というわけで、まだ拙い試みですが、よろしくお願いします。
今回の経緯は、サイト開発中に「note」でも書きました。
私の近著『レトロゲームファクトリー』のリンクも張っておきます。是非読んで下さいね。
2019年5月25日 柳井政和