出版社 : 小学館
ISBN : 9784094511550
榊君にとって、今は何度目の今日ですか?
人生は一度きり。過去の過ちはやり直せない。だからこそ今を大切にし、未来にいかそうとする。間違いのない生き方などありはしない。ありはしない、はずなのだが……。なぜだか僕の人生には、それができる「便利な機能」が備わっていた。方法はいたって単純――頭の中で強く「現状をセーブしたい」と思うだけでいい。脳に針を突き刺したような感覚が走れば「セーブ」は成功。あとは、ただ自殺すれば人生が「リセット」され、「セーブ」した過去の時点まで人生が巻き戻される。しかしその便利すぎる機能は、僕の人生をさらに堕落させるだけに過ぎなかった。そしてまた僕は屋上から飛び降りた――何の覚悟もなく、遺書も書かずに。「さようなら、サカキキヨト」……心のなかでひとり呟き、真夜中のビルの屋上から何度目かの飛び降り自殺を謀ったその時。向かいのビルに何か、動くものが見えた。闇の中を、自分と同じく落下してゆく少女の姿。地面との衝突寸前、彼女がふと、こちらに視線を向けた――その顔を見て僕は驚く。なぜならそれは、まぎれもなく“あいつ”の顔だったからだ。
クールな筆致の推理ロマン傑作。第3回ライトノベル大賞、優秀賞受賞作。