作成:2019-06-24 22:43   最終:2019-06-24 22:43

電書で好きな本を見つける方法

著:館山緑(Site / Twitter / note


 ここ数年、電書で本を買う機会が激増しています。

 オンライン書店で商品の欲しくなるキャンペーンが展開されることも多く、いろいろ本を買ってしまう機会もまた増えています。購入している本のうち、電書の方が圧倒的に増えているのに、紙の本を探す時のようにうまくいっていない部分があります。

 どうも「オンラインでの本の探し方がよく解っていない」のです。「たくさん電書を買っているんでしょう?」と思われるかもしれませんが、実際そうなのです。

 しかも本を探す時に他のジャンルと較べて圧倒的に探しにくいのは、小説です。

「新規で面白そうな小説を探す」これが本当に難しい。何でこんなに探しにくいのか。そもそも「知らない本を探す」時に、何故小説だけが異様に難しく感じられるのか。

 結構真面目にそのへんについて思い悩んでみたところ、気付きました。「そもそも新規の小説を探すの自体、果てしなく難しくないか?」

 今回の文章は「本を探す時に何を見ているか」についてです。


 実は新規作品を手に取る時、同じ本でも紙ものと電書版で探す難易度が全く違います。紙ものの方がより多くの検討材料があります。

 まず、そもそも新たな作品を「これは面白そうだ」と考えて手に取るまでに、かなり多くのことを判断しています。

 当たり前だと思うかもしれませんが、まずは表紙です。普通に本を買うかどうか検討する時に、暫定的に「その表紙デザインが内容、クオリティと同等である」と認識します。他に判断材料がない時ほどそうです。

 その意味でも、実は紙ものの方が検討してもらう時には圧倒的に有利です。

 紙ものの本はまとめて置かれており、出版社、レーベル、作者名、ジャンルなどに分けられています。このあたりの予備知識があれば、内容を判断する前に一緒に置かれている他の本からざっくりと内容を推測することができます。

 しかも紙本は物品なので紙の質感、持ち重り、印刷のクオリティなども補強材料になります。熱心な本屋さんならポップなども用意してくれ、ターゲット層がどこなのか、どんな本なのかを知る材料がもっと増えます。


 これが電書だと画像データしかないので、かなりやりづらいです。箔押し、特殊な装丁の本は画像だと見にくくなっているものも結構あります。

 電書の表紙は基本的に表1(表表紙)しかありません。表2、表3、表4を収録してあったとしても、読んでみる前にそれを確認することができません。

 そのへんにあらすじが書かれている時には大抵オンライン書店ではテキストで付記してくれていますが、確実にあるという訳でもありません。

 ただし、これは電書全般がそうであって、小説だけの問題ではありません。いろんなキャンペーン、割引セールをかけられている時に旧作を知り、手に取る機会はそれなりにあるんです。

 でも「何故か小説ってそういうキャンペーンで手に取ろうと思った機会が少ない」のです。

「漫画じゃなくてテキストだからじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、案外小説以外の知らない本を買う機会は結構あるんです。あからさまに「新規の小説を面白いと知る」機会が少ないのです。


 漫画、実用書、ノンフィクションなどより小説が探しにくいのって、どういうことなんだろう? そもそも他とどう違うのか? しばらく考えてみて大変イヤーな事実に気が付きました。

 小説は試し読みをしない限り、買う時に内容のクオリティを見ることが絶対できない。「この本、面白いんじゃないかなー?」程度のことを推測するのに作品の実データを見て検討してもらえない。ほとんどの場合「作品から派生したもの」から面白いだろうと予測して買うことしかできないのです。

 漫画の場合は最近はネットでの試し読みも充実しています。ハイライトシーンのコマだけSNSで拡散されてくることもよくあります。実データの一部を見て検討ができます。
 実用書、研究書、ノンフィクションの場合「何について書かれているか」という情報自体で探すことができます。ある程度のフィルタが機能します。

 でも小説の場合「その内容が面白いかどうか」を判断するのがとても困難です。


 しかも大変悲観的な事実ですが、大抵の本は「買う前に面白いかどうか、読むに値するかどうかを決める」商品です。しかも内容は『その作家さんの創作世界』です。読む前によさは確認できません。

「紙ものに及ばなくても、電書にだって表紙はあるよね? あらすじだってあるよね? 出版社や著者のサイトなどでも情報載ってるよね?」と当然の疑問を抱かれる人もいると思います。

 全くその通りなんですが、表紙、あらすじ以外のデータは自分で探しに行かないと手に入りません。それを探しに行く時点で既に「この本は面白そう」とある程度思っていなければ、そこまでの労力をかけないのです。

 知らない作家さんの小説を探し、それを読もうという決意をするまでに「データに遭遇して、かなり早いうちにある程度の面白さを想定できないといけない」訳です。 異様にハードルが高いです。「道理で小説本を探すの、めっさしんどいわ」と途方に暮れました。


 それまでは「ワタシが小説本を探すのに手抜きしてたからじゃないの?」と思ってもいたのですが、そんなことは全くありませんでした。他の本と違ってハードすぎです。

 ほとんどの本を読む人は別に目利きでも超能力者でも何でもなく、ごく普通に本を探しています。自分がどんな本を読みたい人間なのか、どんな本を探しているのかを自覚している人は多くありません。

 検索をかける時に自分がどれだけのキーワードを知っているか、検索タグを知っているかがものを言います。これが少ないものほど探すのが困難になります。そして「面白いかどうか」については本当に伝わりづらいです。どうあがいても絶望という気分になってきます。


 だからといって「面白い小説本を新たに探すには運しかないんだ」と思っている訳ではありません。「面白い新規作家の本を手に取るためには、探す方法を自覚しないと駄目なのではないか?」ということです。

 公式情報(表紙データ、タイトル、あらすじ、作家名)からも、実はある程度多くの内容を確認することができます。自分が特定のジャンル、傾向の作品を求めている時には、その情報だけでもある程度の判断はできます。既に自分が面白いと思ったことのある作家の本であれば面白い可能性が高いでしょう。

 知らない作家の本では補強材料は本当にないのか?

 一番楽なのは「その本を面白いと言ってる人の証言を見つける」ことです。口コミですね。ただこれには相当一長一短あります。その内容が絶賛だったら自分も面白いと思うか。実はその人の好みが自分とずれていたり、自分の嫌いな内容が好きな人に受けている場合、高確率であかんことになります。

 あと話題の作家さんの場合、ネット書店などには作品と無関係の炎上レビューが並ぶこともよくあります。必ずしも口コミは本を探す時の助けになる訳ではありません。

 それでも口コミは有用です。使いようによっては好きな本を大量に見つけることができます。

 口コミを有効活用する場合、まず必要なのは「自分と本の趣味が似ている人を見つける」ことです。趣味の似ている人を何人か確保できれば、新規作家の面白い本をあれこれ探しやすくなります。圧倒的です。

 あとは販売している電書の場合、Amazonの『この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています』『この商品を買った人はこんな商品も買っています』もやはり有効です。(特定のショップさんを例に挙げるのはどうだろうと思うのですが、2019年時点では他社さんの類似の機能でAmazon並みに助けにはなっていないと思います)これもある種の口コミです。

「当たり前のことしか言ってねえ!」と思うでしょうが、現時点でこれより有効な方法がないからこそ「新規作家の小説本は探しづらい」のです。

 探せる場所、検討できる材料が増えれば増えるほど精度が上がるので『ノベル読もうよ』さんのように作家個人が多くの検討材料を提示できる媒体が増えてくれれば、少しずつでも好転していくんじゃないかと思います。

 でももう少しくらい、楽になってほしいですよね……。
 この件については機会があったらもう少し深く掘り進めてみたいと思います。


館山緑

寄稿募集中。 現在の集中募集テーマは「執筆環境」「小説資料」です。

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